詳細根管治療

通常は、 歯の根の中の管に関した治療をいいます。
患者さんご自身の歯ですから、患者さんご自身に決定権はあります。
我々歯科医は治すためのお手伝いをしているに過ぎず、患者さんご自身が歯を守りたいという強い意志があってこそ、我々は力を発揮できるのです。
普段からお口の中の細菌をいかに減らすか(どれだけしっかり歯磨きがを行っているか)ということももちろん重要となりますが、悪くなった歯にどのような治療を行うかで歯の寿命は大きく変わってきます。

当院では根管治療を行うにあたり、
- 使用する機材
- 治療にかける時間
- 詰めた後の被せ物
専用の資料を見ていただくことで正しい知識を得て、根管治療への理解が深まり、保険治療で治すか自費である、精細根管治療で治すかご自分で決定できるように当院ではサポートさせていただいております。


根管治療は歯の内部で繁殖した細菌を器具や薬剤を使って徹底的に取り除き、密閉する治療です。
菌の繁殖が進み、神経(歯髄)が細菌によって壊死し細菌が根尖孔から顎骨内に侵入してしまった場合、原因となっている根管内の細菌が取り除かれれば、あとは患者さん自身の免疫細胞のはたらきにより治癒していきます。
私たち歯科医の仕事はとにかく歯の中で繁殖している細菌を徹底的に除去するということに尽きます。

- 理由その①
- 根管の数、曲がり具合は十人十色。意外な場所に根管が隠れていたり、曲がったり、分岐したり、網目状に広がっていたり、複雑な形をしている方がむしろ多いのです!!


根管治療は目に見えない非常に細い根管内で行う、とても繊細な治療です。その根管の形、数は歯によっても患者さんによっても様々です。
特に曲がっている根管や細い根管は器具が根の先まで届きにくく、病気を作っている原因が根の先にあることも多いため、器具が到達しなければ成功率が大幅に減少します。
そのような根管には特殊な機材を用いて曲がっているカーブを攻略する必要が出てきます。
人間の手だけでは限界があるのです。
根管治療は通常の歯科治療の中で、最も難しい治療の一つであると言えるでしょう。
- 理由その②
- 根管はとても細い!!
根管治療は経験と勘だけでは攻略不能
まずたいへんなのが、神経の通る根管を探し当てることです。
根管の数や位置は十人十色でとても個性的です。

- 理由その③
- 唾液の侵入を防がないと成功率が格段に落ちる!!

お口のなかには誰しも唾液が存在しています。
その唾液のなかにはいったいどのくらいの細菌がいると思いますか?
唾液1ml中の細菌の数は1億~10億匹と言われています。
普段ご自身の口の中にこれほどの細菌が住んでいると想像なさったことはあったでしょうか?
ちなみに、口のなか全体での細菌数は、寝起きや歯磨きの前後で異なりますが、だいたい1兆匹と言われています。
これは肛門に存在する細菌よりも多い細菌数です。
根管治療の目的は歯の内部の細菌を減らすことであり、治療中の根管内に唾液が入ると、せっかく減らしたはずの細菌が唾液によって再び供給されてしまうことになります。
根管治療は唾液の侵入との戦いなのです。

- 困難な理由その1 根管の数、曲がり具合は十人十色
- 曲がった根管には形状記憶合金の道具を用いるほうが成功率が上がる



根管の先端まで完全攻略

- 困難な理由その2 根管はとても細い!!
- しっかり見るためにはマイクロスコープが必須
マイクロスコープ(歯科用実体顕微鏡)とは3~25倍まで拡大して物を見ることができる特殊な顕微鏡です。


良く見える「眼」が必須です
千円札に隠されているアルファベットを裸眼できちんと見える人間は存在しないでしょう。
しかし、精度の高い根管治療にはこのような世界での仕事が必要となるのです。
マイクロスコープを使用すると細部まで目視できるので根管の見逃しがありません治療終了時最も細い根管にもきちんと詰め物が入っています。


- 困難な理由その3 唾液の侵入を防がないと成功率が格段に落ちる!!
- ラバーダム防湿で細菌の侵入を防ぐのがベスト!

こうすることで治療したい歯だけが隔離され、唾液の侵入を防ぐようにしています。

複雑に入り組んだ根管の探索や、見つかりにくい細い根管などを診断するのに非常に優位であり、根管治療の際には大いに活躍します。

以上のような機材を駆使して根管を洗浄消毒できた後は、根管をきちんと封鎖しなければなりません。これを「根管充填」と呼びます。当院での精密根管治療では根管充填にMTAと呼ばれる保険適応外の特殊な充填材料を用いています。適切な手法で用いれば非常に予後が良いとされる材料です。
ケイ酸カルシウムを主成分とし、生体親和性や封鎖性に優れ、石灰化促進作用、デンティンブリッジ形成能、抗菌性も兼ね備えた現在歯科界では

しかし、問題は1グラム約15000円というその高額な値段です。いくら成功率が飛躍的に上がるとはいえ、残念ながらこれを保険治療で使用することはやはり不可能です。とはいえ素晴らしい材料だということに変わりはありませんので、当院では精密根管治療に使用しています。
以上のような道具を積極的に用い、あとはとても丁寧に、時間をかけて治療をすることで困難な根管治療の成功率も格段にあがります。
しかし、これらの機材や手法を用いることがなかなか難しいのが今の日本の歯科医院の現状です。なぜなのでしょうか?

奥歯の根管治療において、他の国々での患者の負担額を記します。
日本では国民皆保険によって全ての人が平等に、ある一定の医療を国の補助のもとに受けることが可能です。
左表を見ると、他の国々と比べ、いかに日本の保険制度による根管治療の費用が安いかがわかると思います。
『安いほうが患者としてはありがたい!』
その通りです。
しかし、医者であるからには成功率の高い、患者さんに満足していただける治療を行いたい。
残念なことに先ほどまでに述べた機材を使っても国が定めた保険制度にはそれを評価する点数がありません。それらに対する金銭的な報酬がないのです。
これでは機材や技術を駆使して、時間をかけて一生懸命やればやるほど、日本の保険制度での根管治療は赤字になるのが現状です。
必然的に保険の根管治療では高度な材料や機材を用いることが困難となり、一回の通院でも短い時間で治療を行い、通院回数も増加する傾向にあると言われています。
当然、治療の成功率も下がってしまいます。
当院では患者さんが治療を必要とする歯についての詳細を説明し、その後根管治療についての特別な説明とカウンセリングを行います。そうすることで根管治療とはどんなものか、自分の歯は今どんな状態なのかがご理解頂けると思います。
そこまでご理解いただいた患者さんはご自分で根管治療のやり方や被せ物のプランを決定することができるようになる方がほとんどです。
歯科医院で虫歯を治したり、根管治療をした後、最終的な詰め物や、被せ物の種類を説明してもらったことはあるとおもいますが、根管治療について詳しいやり方や説明を受け、選択肢を提示されたことがありますか?
被せ物や詰め物は建物の建築に例えるなら外壁や屋根です。しかし、根管治療は建物の基礎の部分だと思ってください。基礎工事をきちんとしていない建物は必ず倒壊します。1本の歯を被せなおすとき、基礎の部分の状態の説明を行い、必要な治療法を提示することは歯科医師の義務だと思っています。
いま、あなたの歯が虫歯や根の病気などで抜歯になるかもしれないとき、どうして抜かねばならないのか、レントゲンだけでなく実物の写真やデータなども提示してもらいましたか?それで納得しているのであれば問題はありません。
自分の歯が抜かれる….それは歯にとっての「死」を意味します。
「もう抜くしかないといわれた」 「抜いてインプラントにしたほうがいいといわれた」
様々な訴えを持って患者さんが当院に来院されます。もちろん当院で診断しても、残念ながら抜かねばならない歯は存在します。そして、インプラント治療もしっかりと計画をして、本当に必要な患者さんに提供するのであればとても機能的で良い治療だと思います。当院でもインプラントは専門的に行っています。
しかし、インプラント治療は当院では、本体と被せ物全て含めて1本 約40万円ほどかかります。決して安い治療ではありませんよね。自分の歯を抜かずに残すことができれば、それに勝る治療法はありません。
根管治療は自分の歯を残す最後の砦なのです。
最後まで自分の歯を抜かずに残せるかもしれない可能性を探ってみませんか?
わたしはそのお手伝いをさせていただいているにすぎません。